
- 交通システム
研究背景
高速道路は,わが国の社会的インフラとして重要な役割を担ってきた.しかし,増加した自動車交通量によって,慢性的な交通渋滞,交通事故,環境問題などが大きな問題となっている.それらの対策に必要な設備の増改造や新しいシステムの開発導入には多大な投資が必要なため,これに見合う費用対効果を検証するシステムを確立しておくことが必要である.そこで,多様な条件の下で評価・検討を繰り返すことをできる計算機シミュレーションの重要性が高まっている.
交通システムとは
道路交通システムは,道路,自動車,運転者,制御システム等の種々の要素から構成され,それぞれの要素が影響を与えあうような複雑な構造をもった大規模システムである.そのためシミュレーションシステムでは対象とする問題を効率的に解決するため,簡単化や抽象化を行うことが一般的である.道路交通のシミュレーションモデルは車両1台1台を陽に表現するミクロモデルと,交通流を車群もしくは流体として表現するマクロモデルに大別され,これらは目的に応じて使い分けられてきた.近年の計算機の能力の向上により大規模かつ詳細なシミュレーションをミクロモデルで行うことが可能になり,新しい道路交通シミュレータの研究開発が数多く報告されている.
本研究室での研究内容
多くのミクロモデルでのシミュレータでは,車両の動きに注目し,その動作を直接表現するといった方法を用いている.そのためには運転者が車両を思い通りに操作しているという前提が必要であり,現実的であるとは言い難い.そこで道路と車両および運転者に対してそれぞれ独立にモデルを構築する.その際,車両は3次元の道路上を自由に走行できるものとしてモデル化する.また,本研究では車両の局所的な走行が大域的な交通の流れを形成し,その大域的な交通の流れが個々の車両の挙動を拘束するという,創発現象として道路交通を捉え,対象問題を自律分散システムとしてモデル化する方法を提案する. このモデルの特徴としては,
・ 運転者,車両をエージェントとして自律分散型のモデルを構築すること,・交通システムを物理的制約や動作を記述した物理モデルと,運転制御に 関わる意思決定を記述した情報モデルに階層化し,運転者を陽に考慮すること,
・道路を直線,円曲線,クロソイド曲線で分類・整理した道路モデルを導入,2次元あるいは3次元でのシミュレーションを行うこと,
がある.
